プロフェッショナルファウル公演「ペンドルヒル家の三姉妹」鑑賞記録!

活動記録

今日のブログ更新は豪華二本立て。というのも、朗読も本公演も同日にて行われていたからです。
プロフェッショナルファウルさんの公演は2月3日土曜日18:00より鑑賞。
拙文ながら、感想を書かせていただきたく思います!
(公演中のスタッフさん、演者さんたち、そしてまだ見ていない観客の皆様の都合を考えまして、記事の公開は最終日千秋楽の最中とさせていただきました)

プロフェッショナルファウル

プロフェッショナルファウルは茨城県水戸市を拠点に活動している劇団です。
身体全体を使った大きな演技、表情や動作などで客の空気を掴んでくれます。

普段はコメディが多いそう。今回公演は……?

プロフェッショナルファウル X アカウント → https://x.com/p_foul?s=20
プロフェッショナルファウル HP → https://professional-foul.jimdofree.com/

ペンドルヒル家の三姉妹 あらすじ

人里離れた森の奥に先月母を亡くした三姉妹が住んでいる。
彼女らは世界の理を「翻訳」する一族の家系であり、その知識や能力は薬学や占星術、錬金術へと「翻訳」されていた。
それらは一族と契約をした村にのみ享受され、その対価により彼女らは細々と生きてきた。
だが、過ぎた力はやがて魔術とも称され、一族は魔女や悪魔など「悪しき者」と恐れられた。
そして悪しき者と繋がっていた村は滅ぼされ、辛うじて生き残った一族も散り散りとなった。

ある日、三姉妹の住む家に迷い人が訪れる。
次女は驚愕した。なぜならそれは今は亡き村で命を落とした、かつて親友だった女の生き写しだったからだ。
その女を自分の一族に加えようと次女は言い出す。
長女は顔をしかめる。なぜならその女が三姉妹に不吉をもたらす存在だと知っているからだ。

一方、都市部では謎の疫病が蔓延する。人々は悪しき者として迫害した一族を探し出そうとしていた。

ペンドルヒルの三姉妹 フライヤーより引用

感想

これ、学生料金1000円で見ていいんですか……? というくらいの満足感。
総合芸術としての完成度が高く、驚きと、悲哀と、笑いとに苦しめられて、幸せな2時間でした!

ここから先はネタバレ、およびストーリーの勝手な自己解釈などを含みますから、ご注意ください。

ストーリー

「このいえいいいえいえいえいいえ」 プロフェッショナルファウル公演を見てきました!
このいえ再演と打って変わって、がっつりダークファンタジー。
けれどもプロフェッショナルファウルさんらしい、笑いどころもしっかりとありました。
役者さんがハキハキと話してくれますから、観客側は雰囲気に巻き込まれて自然と笑い、涙してしまいます。

ストーリー開幕から随所に張り巡らされた伏線が、終焉に向けて綺麗に回収されていく。
殆どの謎も解答されて、ストーリーの重厚感も十分でした。
他の方も X にてポストされていましたが、2時間があっと言う間。
ストーリーに飽きたり、停滞感を感じることが一切ありませんでした。

最後に顕れたストーリーテラー、魔女の誰でもないという展開には、うわぁという感嘆の声しか出ません。

個人的に好きだったのは、ペンドルヒルの三姉妹が「嘘がつけない」という設定でしょうか。
嘘がつけない、ということは、言葉に縛られた存在であるということだと思います。

個人的に、何故、長女ピルテが大鴉になってしまったのか、疑問に残りましたが。
嘘がつけない、という設定によって、自身の相対する感情に嘘をつけなくなってしまった形なのかと考えました。
ピルテの中には「姉妹の成長を見守りたい」と「姉妹を面倒見る立場から解放されたい」という二つの感情があったのだと感じました。
それゆえの「鳥になりたい」という乙女発言だったのでしょう。

メタい感想ですが、今回三姉妹は誰も彼も一人当たりの台詞量が、とても多い。
それは言葉をより多く話すということであり、話せば話すほど、縛りが増えていくということなんだと思います。
縛りは魂と身体に制約を与え、ついには人間の形を保てなくなってしまった……というのがピルテだったのではないでしょうか。
そういえばピルテの異変も、真っ先に起こったのは鴉の鳴き声でした。

言葉に縛られた人物と言えばもう一人、アマンダ姉さんもその象徴だと思います。
彼女の言動は自己本位で我儘でこそありましたが、口では多く「愛情」を語っていました。
そんなアマンダの最期は、自分の存在よりも愛した旦那の魂を優先するというもの。
まるで自己本位な性格のアマンダらしくないと一見感じてしまいますが、
言葉に縛られる、という呪いから見れば必然的な運命だったように思えます。

次女は「そばにいて」という言葉に、三女は「頑張っているもん」という自己評価に縛られていきました。

「嘘をつけない」という設定を、演劇上「嘘をつかなければならない」役者がやるという、現実と虚構の皮肉が面白い設定だと強く思います。

心に刺さったのはピルテの立場とマーリーの言葉ですね……
私は出来損ないの長女という育ち方をしてきたので、兄弟の面倒を見なければならない責任感や親代わりという鎖が苦しいほど思い出してしまいました。
くわえてマーリーの「頑張ってる、私なりに!」という態度や「もう怒ってもくれないの?」という失望感は胸に刺さる、ささる……

三姉妹の全ての立場の感情を、贔屓なく、平等に、そして限界まで吐き出させている。すごかったです。

舞台・照明・音響

会場入って真っ先に目に入ったのが舞台正面の大きな星空の布。
そして天井の飾りやカゴに目がいき、棚や机の上へと一周しました。
舞台の世界観の投影が素敵でした……殆ど物を動かさない素舞台だと仰られてましたが、逆に言えば、無駄なものがほとんどない状態で没入感のある舞台設定ができている。
空間デザインのセンスがいいんでしょうね……このいえ再演の時も、高く積みあがった段ボールや窓の明かり潰しが演劇のものではなく、実際に引っ越しの風景の一部として作成されていたのに驚いた記憶があります。
今回、明かり潰しの黒カーテンが、より一層ダークな雰囲気を出していました。
吊り下げられた造花に混じって照明が、まるで魔術道具のように見えたのも素敵でした。

窓の形の照明が凄かったですね……
私の席からだと、丁度鴉の顔になったピルテの輪郭が見えていました。
月明かりという照明に照らされていて、衣装の黒光りが尚カラスの羽のようだったと記憶しています。
暗転の多い舞台。しかし、完全な暗転というものは無く、暗転中に役者の動きに無駄な移動がありません。
夜闇に紛れてカラスに姿を変えるピルテ以外は、暗転中でも動きのわかる明るい色の衣装だったことも、よく計画されているように思いました。

音響ありました? というくらい自然な音の入りと音量でした。
よく聞くとカラスの鳴き声や自然な音が入っていたように覚えています。
役者の演技をより自然なものにする音響だったように感じます
最後の対ウィンゴット家との音響も良かったですね。頭の上を本当にカラスが飛んでいるように聞こえました。

役者

ピルテ

言葉の数々が痛い痛い……。
刺さる言葉を、120パーセントの感情込めて伝えてくれている気がします。
逞しさの中に、掟を破る臆病さと気弱な心が垣間見えるシーンが本当に涙を誘ってきました。
「私が親代わり」という言葉に、ピルテだって母を亡くして頼り処もなく、苦しいだろうに……という同情を強く誘われました。
カラスの声を聞きながら、其の回数が増えるごとに、ああカラスになってしまうんだという絶望感。
傍にいる、という言葉は噓ではないけれど、ゼラの望む形ではない、と言うのがその背中から語られます。
月夜の中でカラスの姿を見た時、涙腺が緩みました……。

ゼラ

初めてプロフェッショナルファウルさんの公演見た時から、ゼラさんを演じた方の演技の仕方が大ファンなんですよねえへへ……!
もうね、この方が話すと全部面白いし、全部感情を煽られます。
観てるこっちは、吹き出すし、笑うし、泣きそうになるし、泣くし、ああああああああああと声にならない声が出ていきます。
シアーシャ抱きしめながら、微笑ましく笑う表情!の穏やかなこと……!
マーリーと喧嘩している時は、キャラクターの年相応といった子どもっぽさが。
オルガを懐かしむ表情には郷愁と悲しみが。
帝国軍を憎む激しい表情も、呆気にとられた表情も、ころころと変わる演技の虜になってしまいます。

マーリー

ピルテ同様に言葉が刺さる、痛い……。
ゼラと最後の喧嘩、マーリーから放たれる言葉が姉への失望感と自分の能力への絶望感が相まって、本当に苦しかった。
一番覚えている台詞が「もう怒ってもくれないの?」でした。
憎らしいセリフも、思い返すと末っ子特有のかわいらしさがありました。
憎いし、ちょっとうざったらしいんですが、それが本当に末っ子のようでリアル。

最期の魔法の掛け方も、本当に「決死」という感じで、鳥肌が立ちました。
照明を背負って、かっこよかった……!

アマンダ

今回物語の中で最も好きなキャラクターでした。
アマンダ姉さん!! 死なないでくれよ!? と物語中で思ってましたが、死ぬより悲しいことになってしまった……。
しかし最期まで綺麗で美人な魔女でした……。

この家再演にて男の子役をされていた役者さんが、今回はアマンダ姉さんでした!
声を聞きながら、いや、まさかな? と思いました。
終焉後のアフターイベントでお声を聞き、すげえええええ!!! となってました。
演じ分けが凄い……演技力の圧倒的勝利。

ウナ

えええええ……? 初めての公演でここまでの演技なさるんですか?
最初から怪しさ・胡散臭さがMAX。個人的に演技で好きだったのは足の運び方ですね。
つま先までぴんと張っていて、軽やかさがある足取り。
はしゃいでいる女性のようで、しかし足音のしない几帳面さと自信の強さも感じる体の使い方。
指の先まで意識された動きは、本当に上品で、言動と相まって一層の胡散臭さがあります。
かと思えば、ペンドルヒル家に討ち入った時の大胆さ、狡猾な強かさ、腕を掴んでマーリーを床に転がす力強さ。
動きの表情が豊かな方だ……すごい……ビビりました。

シアーシャ

ウナの成り上がり貴族感のある動きと対比して、本当にお上品な領主のお嬢様といった動き。
手首・足首が柔らかいのでしょうか。足の運びもあって、ヒールの靴がよく似合っていました。
全員の動きの激しい演技が多い中で、シアーシャの動きは文字通り優美。
指はしっかりと伸ばされていますが、それを受け止める手首足首はしなやか。
一朝一夕で真似たような似非お嬢様感が微塵もなく、本当に童話のお嬢さんが出てきたようでした。
最後は捕虜にされたお母さま(偽物)のために取り乱すシーンがありましたが、その動きでさえも粗雑さや大雑把さが感じられません。
倒れるときも、足の揃え方が固定されていて、本当に細かいところまで気が配られた演技だと脱帽です。

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