本日も積読消費のための読書です。
さっき数えたら、積読の本が残り47冊もありました……数えちゃいけないですね。
とはいえ、読まなければ片づけられないのも積読の厄介なところです。
今日、感想を載せるのは「『学力』の経済学」という教育経済学について書かれている本です。
大学の経済学入門の講義で紹介されており、私が大学一年生の時に購入したまま、読まずに放置していた一冊です。(現在三年生なので二年ほど熟成させました)
経済学に興味がそこまでないんですよね……と思いながら読みましたが、入門として扱うにふさわしい、面白く経済が学べる本でした。
「学力」の経済学
漫画版も出ているようです。気になる方はぜひ。
日本の教育が抱えている問題
本書全体を通じて、筆者である中室牧子さんが伝えたいことは
教育にエビデンスを。
という何ともシンプルなものでした。
本書ではアメリカや南アフリカなど様々な研究の論文を用いて、本当に効果のある教育について論じられています。
ところが、日本教育ー文部科学省や地方自治体ーの推し進める教育改革にはエビデンスがないものや費用対効果の低い政策が多いと本書では述べられています。
そのようなことが起こってしまう原因は、日本では子どもを使った教育の研究が倫理的に認められていないことや長期的な観察による研究を行う学者の少なさにあります。
中室さんは、日本の親・保護者が抱きがちな子どもの教育に対する悩みから、日本社会の教育問題の原因にまでわかりやすく解説してくれています。
経済学の教科書としての一冊
本書の主題は「教育経済学」です。
中室さんは経済学の目的は人々がインセンティブ(外的・内的刺激)にどのように反応するかであり、教育は経済学を活用するにふさわしい場であることをはじめに解説されています。
本書を論じるにあたり、必要な経済学用語はかみ砕いて説明がなされています。
加えて行動経済学や心理学、統計学など幅広い学問の視点を組み込んでいるため、他の学問と経済学との関係を知る手助けにもなります。
わたしは家族法ー子どもの育成に関わる法律ーについて専攻して学んでいますが、家族法につながる話題も多く、興味深いと感じました。
大学は「学んだ一般常識が本当に正しいのか」を確かめるための機関、とよく言われていますが、どのようにして一般常識を取り入れ、どのように疑うべきかの道筋も示してくださっています。
経済学の入門書として、本当にはじめの一歩と言っても過言ではない、易しさと面白さがあります。
面白かった研究
個人的に「『学力』の経済学」にて面白かった研究は78頁に記載された「幼児教育の重要性」に登場する「ペリー幼稚園プログラム」です。
この幼稚園プログラムは、以下に幼児期の教育が重要であるか、またどのような幼児期教育がその後の人生に影響を与えるのかを調査した研究です。
この研究結果をもとに中室さんはIQや学力テストでは測れない「非認知能力」に着目しています。
「非認知能力」とは誠実さや忍耐等、子どもの性格や勉強に取り組む姿勢、他者との人間関係やコミュニケーション能力に関わる能力です。
そしてこの「非認知能力」の養成が学校という場で養成できることも示していました。
印象深かった本文(引用)
人間はだませても、データはだませない。収集したデータを分析し、社会の構造を明らかにすることが、いかに自分たちの生活を大きく変える可能性があるか、理解してほしいのです
「『学力』の経済学」中室牧子著 Discover出版 7頁より引用
遠い将来のことなら冷静に考えて賢い選択ができても、近い将来のことだと、たとえ小さくてもすぐに得られる満足を大切にしてしまう
同書30頁より引用
子どものもともとの能力(=頭の良さ)をほめると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する
同書49頁より引用
まとめ
両親や保護者ならば自身の子どもに置き換えて、大学生ならば今まで受けてきた教育に置き換えて、この本を読むことができるでしょう。
その中で「確かにこんな教育方針だった」と気付かされる部分が数多くありました。
加えて、これは間違いだったのかと悔しくなるような気付きも多々ありました。
これだけの研究結果を日本で生かせないのは、確かに将来の日本教育のために勿体ないと感じる部分ばかりです。
また、わたしは経済学の講義でこの本を知りました。
しかし経済学の分野のみならず、多くの学問でこの本について知識を深めても良いと感じています。
今後、少子高齢化で子どもの数が少なくなるとは言え、将来の子どもたちのために、この本の利点が多くの人に伝わり、日本の教育に変化が起きることを願うばかりです。
経済学にはとんと興味のない私でしたが、最初から最後まで苦なく読み終えることができました。
また大学では民法ー特に家族法ーなどを先行している私ですが、家庭環境の話や学校のいじめ問題にも切り込む研究があり、そういった観点からも勉強になるばかりでした。
これから勉強を控える方や子どもの教育に困っている方、教員としての職務を担っている方は読まなければ損だと思います。ぜひ。
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