クリエイターは読むべき⁉ 「かくかくしかじか」作:東村アキコ

日々雑記

スマホは今日の夜まで触れません! 昨日は禁断症状なのか夜中に頭痛で動けませんでした。
スマホがない時って、私はひたすら本を読んでいるみたいです。
先日「ブログとか小説とか書いてるなら一度は読んだほうがいいよ」と言われたので、全巻セットを購入しました、今日は東村アキコ先生の「かくかくしかじか」をご紹介です。

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フットワークが軽いことが私の特技なので、届いてすぐに読みました。

東村アキコ

実を言うと東村先生の作品を殆ど読んだことがない私。
10代の頃に、母がテレビで「海月姫」を見ていたな、と思い出してみたり。私の母や叔母は東村先生の漫画をちょくちょく読んでいた記憶があります。

そんな東村アキコ先生を調べてみると、かなりニュース記事やインタビュー記事が出てきます。
おそらくかなりユーモアのある方なんでしょうね。どの記事も尖りがあって面白いです。
今度、実家に帰る時に母と叔母に漫画を借りて読んでみようかな?

東村アキコ先生の代表作は「海月姫」「東京タラレバ娘」「まるさんかくしかく」など。
初めて読んだ「かくかくしかじか」も、コメディーもありつつ、しっかり泣かせてくれる作品でした。

https://park.jins.com/feature/editor/editor-7/nagano5
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かくかくしかじか

若さゆえに「絵が上手い」と自惚れていた林明子は絵画教師の日高先生に出会い、罵倒され、教えを受け、美大受験を乗り越えていく。美大生になっても、大人になっても、8年間という長く短い期間、日高先生の絵画教室に通った。東村アキコ先生の自伝コミック。

好きだった言葉

大丈夫 大丈夫 
あの頃の先生の「大丈夫」が今の私を支えているという……皮肉なもんです
しかしなんで若い時って 出来るのに出来ないフリ
しんどくないのにしんどいフリ 楽しいのに楽しくないフリ
何だって出来たはずなのに 無敵だったはずなのに

「かくかくしかじか」四巻 より引用

「先生の口んとこに耳くっつけて」
「そしたら…先生」
「ほんっと…かすれた声で 聞こえるか聞こえんかの小さい声で オレに」
「描け って」

「かくかくしかじか」五巻 より引用

感想(ネタバレ注意)

たった五巻! たった五巻で、この重量と満足感!
漫画喫茶で読むとか、スマホでレンタルするとかじゃなく、純粋に買ってよかったと思える作品でした。

高校時代のアキコ先生の自惚れは痛いほど突き刺さりますね。
あー私もこんなこと思ってた、思ってたって。勉強でも、好きな事でも、自分よりもずっと前を歩いている子たちがいても、見ないフリして「私は最強だ!」「私が一番だ!」と思い込んでいた時期がありました。

飛び出す謙虚な言葉も、本当に謙遜しているわけではなくて。
謙遜していた方が大人に見える、とか、謙虚な方が慎ましく見えてカッコいいだろうっていう若い邪な心があって。精一杯、生まれたばかりの邪な自尊心を隠して、大人ぶる時期。

それから大学時代。アキコ先生は描きたかった漫画も描けず、課題の絵も描けず。
嫌なことから逃げて、遊び歩いて、言い訳ばかり。今の私もそういう大学生活を歩んでいます。

課題が嫌で演劇サークルに逃げました。演劇サークルが嫌になって一人で遊び歩くようになりました。
それから今は卒論から逃げてブログや小説を書いています。
就職活動が嫌で、毎日文章を書いて、アルバイトに明け暮れています。
やらなきゃいけないことから逃げたくなるんです。やりたいことに向き合うにも、やっぱり、やらなきゃいけないことが立ちはだかるから、結局逃げてしまうんです。

刺さる。すごく刺さる。怠惰な自分の生活が、ありありとわかってしまいます。悔し。

大丈夫 大丈夫 
あの頃の先生の「大丈夫」が今の私を支えているという……皮肉なもんです
しかしなんで若い時って 出来るのに出来ないフリ
しんどくないのにしんどいフリ 楽しいのに楽しくないフリ
何だって出来たはずなのに 無敵だったはずなのに

「かくかくしかじか」四巻 より引用

この言葉が凄く刺さります。例えば卒論でも、いつもスマホを見て、動画を見てしまう時間をなくせば、きっとできないことは無い。
演劇サークルも身内ノリが苦しかった時もあって、でもきっと乗っかっていればずっと楽しくていい思い出だったはずなんです。
就職活動だって、インターンも、課題も、やろうと思えばなんだってできる時期なんですよね。

後悔先に立たずとは言いますが、後悔してしまうことばっかりですね。

でも、私はこうも思います。後悔ってきっと選ばなかった人生を惜しんでいるだけなんだって。
東村先生は自伝の中で、日高先生に何か言えばよかった、マンガじゃなくて絵を描くべきだったかも、もっと謙虚に生きるべきだったかも、もっと先生と話すべきだったかも、なんて後悔が私達読者に伝わるように描いてくださっています。
でも東村先生は結局、今、漫画を描いている。日高先生は亡くなってしまった。

あの漫画での日高先生の「描け」という言葉は、私には「選ばなかった人生を惜しんでいるくらいなら前に進め」と言っているようにも聞こえるんです。
これは私がまだ未熟だからでしょうか? 大切な人の死や創作に関して何かを残している人間ではないからでしょうか。

「先生の口んとこに耳くっつけて」
「そしたら…先生」
「ほんっと…かすれた声で 聞こえるか聞こえんかの小さい声で オレに」
「描け って」

「かくかくしかじか」五巻 より引用

日高先生の生徒さんたちも、東村先生と同じように「これやったら日高先生が嫌がるかなぁ」なんて考えこむシーンがあります。上の台詞の前にも、「先生そういうの嫌そう」なんて皆で語りあかしています。
東村先生も漫画を書くときに、漫画一本で、という言葉が日高先生に言えませんでした。

でも、そういう生徒さんに日高先生は「描け」と言っていた。
俺は嫌いだ、とか、そんなことを辞めろ、ではなく「描け」。
これが答えな気がしました。

日高先生はどんな道に進んでも、きっと描くことを辞めるな、と言った気がします。
それが残るとしても、残らないとしても。

つい先日、大学の講義でこんな言葉を聞きました。
「歴史的な出来事っていうのは、基本的には異端で、非日常。ある時にぽっと出てきた天才たちが歴史を推し進めてしまう。歴史的な出来事が起こるまでには、多くの平凡な人たちが日常を必死に編み込んでいる。人間が絶滅しないように。次の天才が現れるまで、滅亡しないように」

この言葉が素敵だと思うんです。私達は若い頃に何者かに成れると信じている。信じて筆を手に取り、絵を描いたり、文を書いたりする。でも大抵はどこかで自分が平凡だと、何も残せないと気が付いてしまう。そうしてスーツを着て、パソコンを前にして、社会人になっていく。

日高先生が絵画教室をしていたこと、殆ど無償の奉仕で多くの生徒たちを抱えたこと、人情に厚かったことも、東村アキコ先生という存在が生まれるように、その作品が誰かの目に留まるように、日常を編み込んだことだったのではないかと思われるのです。
宮崎の地で、絵画を描きたいという沢山の若者の志が完全に消えないように。

上手く感想を書けていますかね……自分でも不安になってきました。
つまりは、何かを残すために平凡な日常を重ねていくこと、これが凄く大切なことだと思えました。
何かのクリエイターを目指している皆様、作家、漫画家、イラストレーター、なんでも。
ぜひ読んで欲しいです。私もまたこの漫画を誰かに紹介したくなってきました。
AIが活躍する時代になりましたが、まだ、人の心を動かすのは人の物語です。人の歴史を動かすのは、人の努力の積み重ねです。自分が残せなくても、自分の意志を継いだ誰かが残すこともあります。

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コメント

  1. 滝江 より:

    『かくかくしかじか』を読んでくれて嬉しい!

    この感想文からも作品に感動してくれたのが伝わります。

    とにかく『描く』ことだね。

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