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出先で書いたので、今日中にWordに起こします。少々お待ちください( * . .)”
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男1人
女1人
男、登場。大きく伸びをして公園のベンチに座る。
男「今日もいい天気だなぁ」
女、登場。しばらく辺りを見たあと、男の座るベンチに男をどかして腰掛ける
男「え」
女「……」
男「いやいやいや、他にも空いてるベンチあるじゃん」
女「見えなかったので」
男「見えないわけなくない!? 俺真ん中に座ってたんだけど!?」
女「はぁ……しょうがないですね、じゃあどいてあげますよ」
男「どいてあげるって、俺の方が先に……」
女「座らないんですか」
男「いや、座りますけど」
男、気まずそうに腰掛ける
女、気にせず準備する。ベンチの前に小銭を入れる缶を置いて、アコースティックギターを取り出す。
男「何弾くの?」
女「ラブソングです」
男「あ、あぁ、そう……」
女、弾き始める。音は出るが下手である。
女「仏説摩訶般若波羅蜜多心経……」
男「え」
女「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時……」
男「ちょ、ちょっ、ちょっと待って!?」
女「なんですか」
男「ラブソングって言ってなかった?」
女「解釈によってはラブソングです」
男「どう解釈してもラブソングにはならないけどね!?」
女「この辺いるんですよね、幽霊」
男「早く言ってよ!? じゃあ座らないよ、こんな場所」
女「え、聞いてくれないんですか? 最大限の愛をこめて歌いますよ」
男「聞くと思ったの!? そんな愛情いらないよ!」
女「今なら清めの効果付きです」
男「尚更いらんわ! なんだその効果」
女「私、巫女のバイトやった事あるんで。だから効果ありますよ、多分」
男「確証ないんかい!」
女「やっぱりこっちの方がいいですかね」
女、木魚を取り出す
男「そっちも持ってるんかい!?」
女「でも路上で歌うならギターかなって」
男「歌ってる自覚あるんだ……というか、清めるならその足元に置いてる缶、何?」
女「あわよくば稼ぎたい」
男「邪だな!? 絶対清めの効果ないよ!?」
女「喧しいですね……黙って聞いててくださいよ」
男「おう……というか、ギター弾くの下手すぎるって」
女「初めて触ったんですよね、コレ。貰ったんです」
男「あぁ、そうなの。じゃあ貰った人にちゃんと弾き方教わった方がいいよ」
女「そんなに聞くに耐えないですか」
男「うん」
女「照見五蘊皆空度一切苦厄……」
男「話聞いてた!?」
女「これ嫌がるってことは、あなた幽霊じゃないですか」
男「俺は生きてるよ!」
女「生きてるんですか!?」
男「失礼だな! 全く!」
女「……あの、教えてくれませんか。ギター」
男「お、おう……(受け取って)ここ、ちゃんと指で抑えて、そう、そんな感じ、でちょっと辛いけどこっちも指伸ばして、んで弾いて」
女、じゃーん、と鳴らす
男「焦らなくていいから、ゆっくり、弾けばいい。最初はコードの押さえ方乗ってる本でも買いなよ。YouTubeで動画見るんでもいいしさ」
女「……もう居ないんですよ」
男「え?」
女「このギターの持ち主、もう居ないんです。あそこの道路で車に跳ねられて」
男「あぁ、そうなの……なんかごめん」
女「私、その人とちゃんと話したことなくって」
男「ん?」
女「その人のお母さんにお願いしたんです」
男「……」
女「私は恋人なのでギターくださいって」
男「ガッツリ嘘じゃねぇか! んで尚更清めの効果ねぇよ!」
女「色不異空空不異色色即是空空即是色……」
男「話聞いてる!?」
女「ここに霊がいるんです、その人の」
男「そう言えばそうだったな! あぁ、もう、俺帰るよ!?」
女「その人がここにいるの、私のせいなんです」
男「……え?」
女「その人に告白したくって、手紙書いたんです。ここで告白するつもりで、呼び出したんです。そしてここに来る途中で、その人、車にぶつかって……」
車のブレーキ音
女「今日で事故が起きてから48日目。49日を過ぎたらその人は悪霊になってしまうから、その前にって」
男「はぁ……」
男、ベンチに座り直す。女、男を見る。
男「ちゃんと最後まで聞くよ」
女「ありがとうございます。あのひとつ聞いても良いですか」
男「どうしたの」
女「貴方は生きていますか」
男「……生きてるよ、ちゃんと。君の歌を聞き終わったら、目を覚ますよ」
女「私にギターを教えてください」
男「うん、教える。だからちゃんとギターを返してね」
女「歌い終わったら、聞いて欲しいことがあるんです」
男「うん、聞く。その前に、ちゃんと『初めまして』って言おうね」
女「ずっとずっと、この公園でギターを弾く貴方を見ていたんです。だから、貴方に向けて歌います」
完結
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