正義の行方と道化の魂 ~ジョーカー フォリ・ア・ドゥ鑑賞~ 感想と考察*ネタバレ有

日々雑記

お疲れ様です。今日で連勤15日目です。私です。今日は仕事前に映画鑑賞。読書をする時間が上手く取れないので、空いた時間を見つけて芸術作品に触れたいと思っています。
今日見た映画は「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」
2019年に公開された「ジョーカー」の続編となっています。この映画が始まる少し前に友人たちと「ジョーカー」も見ました。アマゾンプライムで見たのが惜しいくらいには面白いと感じましたね。

駆け込みでホットドッグとアイスティーを購入したので、チケットの写真が乱れているのは許してくださいね。

私はバットマンを知らない状態で見ているので、前知識は完全に「ジョーカー」だけです。
今回の記事は私の感想と考察になります。ネタバレも多少含みますので、ご注意ください。(ネタバレや個人考察が苦手な方は読まないようお願いいたします。)

ジョーカー フォリ・ア・ドゥ

5人を殺害したことで拘留されているアーサーは精神病棟にて一人の女性リーと出会う。アーサー/ジョーカーとリーの出会いは再び社会を混乱の舞台に演出していく。5人を殺害したのはアーサーか、ジョーカーか。リーが愛したのは、彼女を愛したのは。拘置所と裁判所の狭い世界が二人を狂気の入口へといざなっていく。

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映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』大ヒット上映中!世紀のショーが始まる――未曾有の社会現象を巻き起こした『ジョーカー』のその後、衝撃のラストに備えよ。

ジョーカーは amazon prime でも見られるので、ぜひ見てみてくださいね! ↓

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大分バットマンの映画とは設定が異なるようなので、そちらから入ると違和感があるそう(知人談)
私はこの映画を見てからバットマンが気になっているのですが、何処から見たいいのかわからないので、もしよろしければコメントで教えてください!

感想

ジョーカー、ジョーカーフォリ・ア・ドゥ、どちらも面白かったです。ここからはジョーカーの感想も含めて記していきますね(ジョーカー1作目を無印、2作目をフォリ・ア・ドゥと省略させていただきます。ご了承ください)
また、ネタバレを含んでいます。映画をまだ見ていない方やネタバレ、考察が苦手な方はブラウザバック推奨です。ご注意ください。

さて、前作無印では「ジョーカー」誕生の物語ということで、主人公の立場はかなり惨め。職を失い、母を失い、人間を殺し、そうして悪のインフルエンサーとして名を馳せていく――そんなジョーカーの悲しい誕生の物語が描かれます。無印ではジョーカーの物語は日本人の好きな「下剋上」に近いものがある気がしています。
惨めで生きる価値のない人間が、ひょんなことから弱者を束ね扇動し社会を混乱させる悪に成りあがる。この映画での「悪」とは倫理や道徳的に悪いというものではなく、他の人間から何かを奪う、という意味での「悪」です。だからこそ「ジョーカー」のキャラクターは悪であり、畏れるべき存在でありながら、一方で尊敬や希望を見出すヒーロー像さえ浮かんできます。

正義の行方と道化の魂

前作無印で示された「弱者」「強者」の二項対立はフォリ・ア・ドゥではじゃんけんのように示されていました。皆、グー、チョキ、パーのいずれかで、誰かには強い態度を示すことができ、誰かには負けてしまう。
今作も前作も黄色が強調されています。ChatGPTによると、黄色は欧米では臆病者や裏切り者を意味するそう。

前作無印で黄色の効果を注目してみると、アーサーや虐げられている人々を中心に黄色い照明や演出が用いられています。
今作フォリ・ア・ドゥでは虐げられている、いないに関わらず黄色い照明が登場します。アーサーは勿論のこと看守や一部の囚人たち、後半を見守る人々にも使われているんです。「弱者=黄色」の偏見を持っていたので少し混乱しましたが、これには意味があるんだと思いました。

つまりフォリ・ア・ドゥでは誰もが誰かよりも「弱者」であり、誰もが誰かにとっての「強者」になりうるという、社会の複雑な関係を示しているんだと思います。
弱者の中に「ジョーカー」に成りうる因子があるのは無印、フォリ・ア・ドゥ共に変わりません。
しかしフォリ・ア・ドゥでは「ジョーカー」になったアーサーでさえ、別の誰かにとっての「強者」であり、絶対的な「弱者の希望」にはなり得ないことを示しているんです。

余談ですがこれはある意味、ジョーカー無印を危険視して放送を禁止しようとした人々への皮肉(ジョーク)だと感じましたね。

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彼らは社会的弱者から「ジョーカー」が生まれるのではないか、と危険視して放送禁止を訴えました。今作のフォリ・ア・ドゥで示されたのは、誰もが絶対的な強者、絶対的な弱者になることは出来ないという事実。
(映画の公開禁止を訴える強者意識の高い)お前らも「ジョーカー」になる可能性があるんだよ、というメッセージ。
ジョークがテーマの映画としてはもっとも笑える皮肉だと思います。

さて本題に戻って、「ジョーカー」の位置づけは、無印においては大富豪の革命のようなものでした。フォリ・ア・ドゥではトランプのババのようなものになっています。「ジョーカー」としての役回りは依然「弱者から成り上がるもの」「弱者を扇動するもの」

無印で権威的であった立ち位置は、フォリ・ア・ドゥではだれがその役目を担うのか爆弾回しゲームの爆弾になりました。「ジョーカー」としてのキャラクターが独り歩きしてしまい、もはやアーサーには演じられなくなってしまった。だからこそ裁判の途中でアーサーは「僕はジョーカーでは無い」と発言してしまいます。
映画序盤のアニメ―シーン、一見すると多重人格を疑わせるものになっていますが、陰である「ジョーカー」が簡単にアーサーから離れていくのを見るとただの副人格ではないことを表しています。
「ジョーカー」はもはや皆の幻想としての理想のキャラクターになった。アーサーには「ジョーカー」というキャラクターを制御できなくなった(演じられなくなった)ことを表しているんだと思います。

考えてみれば手遊びの「ババ抜き」「大富豪」どちらにおいてもジョーカーは異質なカードです。
無印では「何にでもなれるカード」「革命を起こす切り札」だったジョーカーですが、フォリ・ア・ドゥでは無印的な役割に加えて「制御出来ないババ」というアイデンティティも付与される。
ババ抜きにおいて最初から持っているジョーカーはまだ扱いやすい。しかし後半に回ってきたジョーカーはできる限り持っていたくないもの、早く手放したいものに代わってしまいますよね。

最後のシーン、アーサーを刺した人物が今度は「ジョーカー」と同じように笑っていました。
笑い方が抑えられないような病的な笑い方。泣いているようにも聞こえる笑い方です。
「ジョーカー」はアーサーの手を離れ、別の誰かが「ジョーカー」を演じるのだという暗示ではないでしょうか。

フォリアドゥ――二人狂いの「二人」とは、アーサーと「ジョーカー」のことだと思います。
しかしアーサーは常人でした。「ジョーカー」のように人を惹きつける魅力もない。
一緒に狂えるほどの胆力も度胸もないただの知的障害持ちの常識人でした。
「ジョーカー」はじゃんけんのルールを崩してしまう、圧倒的な異質キャラクターとして全員から認識されていきますが、アーサーはじゃんけんのルールの中で生きるしかない人間だったのです。これが「ジョーカー」とアーサーの乖離を引き起こしてしまった。

再確認ですが、私は「ジョーカー」がアーサーの副人格だとは思っていません(アーサーが多重人格者だとは思っていません)。ただ他人に信じ込ませようとした道化の姿が、嘘だけが独り歩きしてしまった哀れな人間だと思っています。

演出について

フォリ・ア・ドゥでは描かれている場面はアーサーの妄想世界か裁判所か刑務所(精神病棟)かしかありませんでした。だから少し単調に見えるかもしれません。
けれども、「弱者」と「強者」の二項対立では無いという社会の絶対的な仕組みをありありとわからせてくる。
一方で前作無印ではアーサーの家や様々な職場、病院、スラム街、電車など多くの場面が映るのにも関わらず徹底してアーサーの惨めさ、「弱者」と「強者」の二項対立を映し出しています。

フォリアドゥでは狭い世界から大きすぎる社会を描くのに対して、無印では大きすぎる社会から狭い世界を描いていました。
この逆転した視点転換で「ジョーカー」という役回りの異質さを描いていることが素晴らしいと思いましたね。

私もただ一度しか見ていないので、何度か繰り返し見ることで演出についてもっとわかることが増えていくのかもしれません。公開されたばかりですから、放送禁止になるまでは時間を見つけて見に行こうかなと思います笑

ジョーカー(字幕版) https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08272QZ5W/ref=atv_dp_share_r_tw_1f04038dce9d4

大ヒット上映中!映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』オフィシャルサイト
映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』大ヒット上映中!世紀のショーが始まる――未曾有の社会現象を巻き起こした『ジョーカー』のその後、衝撃のラストに備えよ。

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