読書ノート18冊目「路傍の石」山本有三作

日々雑記

大学で本を借りてきました!!
山本有三を読んでみたいと唐突に思った時期があり、茨城大学図書館で探しました。
個人的には文庫本で所有しておきたかったのですが、何処にも置いてない、売ってない、悲しい!!!

ということで、大学図書館にあったとても古い「山本有三全集」から読んでます。
本自体はもう返却してしまったので、普段書いている好きな言葉などは今回載せていません。
申し訳ないです……。

「路傍の石」は映像化していたり、漫画化もしているみたいです。
教養的な作品だなぁと感じましたが、美談ではありません。
圧倒的な社会格差や不平等に立ち向かう人間を鼓舞する作品ばかりでした。

山本有三

大正初期には芥川龍之介、豊島与志雄らと第三次『新思潮』を創刊しており、大正半ばに劇作家として文学の世界に出てきました。
劇作家時代の作品には「生命の冠」「同志の人々」など。
大正末期から小説の執筆をはじめ、「生きとし生けるもの」「女の一生」「真実一路」などの作品を書いています。


今回ご紹介する「路傍の石」は国民的作品としても親しまれました。
戦後には政治家としても活躍。劇作家協会や文芸家協会の設立や国語の新表記の推進、国立国語研究所の設立など、かなり精力的な功績を残しています。
「濁流」を連載中に86歳で亡くなりました。

関連資料↓

山本有三 紹介 | 公益財団法人 三鷹市スポーツと文化財団

路傍の石

あらすじ

極貧の家に生れた愛川吾一は、貧しさゆえに幼くして奉公に出される。やがて母親の死を期に、ただ一人上京した彼は、苦労の末、見習いを経て文選工となってゆく。厳しい境遇におかれながらも純真さを失わず、経済的にも精神的にも自立した人間になろうと努力する吾一少年のひたむきな姿。本書には、主人公吾一の青年期を躍動的に描いた六章を“路傍の石・付録”として併せ収める。

『路傍の石』山本有三/新潮社 より引用

好きだった言葉

また大学で本を借りられたときに更新します! 本当にごめんなさい!

「こぶ」

「山本有三全集」を読んだので、同書に掲載されていた「こぶ」も読みました。
こちらはあっさりしていて読了後の物足りない感があり、もう一冊借りていた山本有三作品集の方で確認したのですが、ここで終わりなよう……。
現実も必ずしも綺麗に完結する訳ではないですよね。
何かを成し遂げたいと思う人はこぶの話のような弊害に直面してしまうことも多いのかなと思いながら読みました。
主人公が中流階級、上層を目指そうとするからこその俯瞰的に見た社会。主人公の立場がかなり複雑でした。
低階級出身の主人公は、他の低階級の雇われ人のように階級が上の人々を馬鹿にすることはありません。ただその心中では「いつか上の階級になってやる」という野望を秘めています。
この野望があるからこそ、どんなにひどい目に合っても、理不尽な目に合っても主人公は毎日を生きていきます。
話全体から伝わる、何かを成し遂げるためには「誰か」ではなく「自分」を貫く姿勢の重要さ。
山本有三の生き方も関係しているのかな? と思いつつ読みました。

感想

山本有三は読みやすい文章を書きますね。全体的に文章の柔らかい印象を受けました。
登場人物の感情は淡白でわかりやすい言葉が使われています。心理描写ではしっかりとその感情に名前を与えて、描かれていたと思います。情景描写が少ないためにそのように感じたのかもしれません。
すっきりした言葉を遣ってはいますが、感情の機微を事細かに書くので登場人物自体はかなり深い人物像をしています。

そして「こぶ」も「路傍の石」も主人公の負けず嫌いが強い……!
まだ序盤も序盤から、理不尽に立ち向かう主人公のやり切れなさが伝わってきました。
吾一の保護者くらいの年齢もあってか、私は、辛抱する吾一に「頑張れ」と応援したくなっていきます。
これを吾一と同じ年ごろで読んだらどんな感想を抱いたのかな……?

しかし最後まで……最後まで……吾一が報われません。
前を向いて生きようとする子どもの純粋さとそれを食い物にする大人の残酷さとが入り混じる作品でした。
一方で理不尽で酷い世界であっても、自分を理解してくれる人が一人あれば随分救われる、と印象付けられる作品でもあります。
吾一の成長の度に、その近くにはあらゆる方面から助けよう、支えようとしてくれる大人たちの姿もありました。

学びたいと思っても金が要る。やりたいことからどんどんと遠のいていく吾一。
これはいつの時代になっても変わらないことで、それでもめげずに生きていこうとする吾一は凄いことです。
筋書きだけを見たら「胸糞」と言われる話展開かもしれません。
でも吾一が底抜けに前を向くんです。辛抱して、辛抱して、涙を流すことだってあるのに、それでも勉強したいという気持ちを諦めないんです。
読んでいた私はこの話を安易に「胸糞」とは言えませんでした。
いつだって吾一は「ちくしょう」と言います。
よく言えば子どもの抱く純粋な希望と克己心で、悪く言えば諦めが悪い、世間を知らない貧乏根性。
この絶妙なバランスと成長していく子どもの複雑さを良く描き切った作品だと思いました。

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